部門長挨拶

放射線治療とは、放射線を患者さんの病巣に照射し、正常な細胞を保護しながら癌細胞にダメージを与えて根絶を目指す治療です。手術、化学療法と並ぶがん治療の3本柱のうちの一つであります。

診療支援部放射線治療部門は、患者さんに対する放射線治療の実行はもとより、コンピュータシミュレーションを用いた治療計画、放射線量の保証、およびそれを取り巻くハードウエア、ソフトウエアの保守、管理、法令遵守に係る活動を行う専門技術者集団であります。

広島大学は、リサーチ・ユニバーシティとして国際化と研究業績で世界のトップ100を目指しており、大学内の各方面で様々な取り組みが活発に行われています。当部門では、広島大学病院の第三期中期目標・中期計画 (平成28年~令和3年) において進められている「世界最高水準の放射線治療チームの育成と地域及びアジア近隣諸国への展開」に参画、多職種が協働する「放射線治療チーム」のチームビルディングについての調査、放射線治療に係るより良いチーム運営の提案やトレーニング、希望する国・地域への講師の派遣や、研修生の受入れ事業等を計画しております。

また、国内外の学会はもとより、広島県放射線治療技術研究会をはじめとした地域の研究会、勉強会などにも積極的に協力して放射線治療技術の均霑化に努め、国内のみならずベトナムやモンゴル等、近隣諸国の治療施設への技術的支援などにも取り組んでおります。

私は、平成31年4月に先代の大野吉美部門長より部門長業務を引継ぎました。前述したような活発な当部門を継承し、更に発展させていくにあたり、私は次に掲げる使命を以てあたりたいと考えております。

まずは、法令遵守・安全・信頼です。

当院は、世界初の被爆地である広島にある唯一の大学病院であります。したがって、我々はこの地にある放射線を取扱う専門家集団として、内外の法及びその精神を遵守し、患者さんをはじめ国民の皆様の放射線や治療に係る疑問や不安を解消し、信頼される部門を目指す、ということが最も重要であると考えます。

30年前には当たり前であった治療法も、現在の基準に照らせば到底受け入れられないものがあったりします。法令も時代に応じて変わります。同じことを続けるだけでは進歩がないだけでなく、いつの日か公共の敵になりかねません。我々は、グローバルスタンダード、時代に応じた技術水準を身につけて、自らの行いを常に振り返りながら、国民の期待と信頼に応える技術を提供してまいります。

2つ目は、技術開発・教育・伝道です。

広島大学病院の理念は、全人的医療の実践、優れた医療人の育成、新しい医療の探求であります。高度で安全な放射線治療の提供、新技術の研究開発を推進し高度な治療技術の均霑化に努める。教育の体系化を推進し、チーム各個人の能力を高め、一人ひとりの哲学・情熱の萌芽を促進する。これはまさに、広島大学病院の一部門たる放射線治療部門の使命であります。チーム全員が、自分の仕事の社会的な意味、意義というものを深く考え、自覚することで、自発的に情熱をもって仕事にあたり、内外に技術を発信する、そのような組織を目指します。

3つ目は、最適化・効率化を掲げます。

金銭的・時間的・人的な資源、リソースというものは限りがあります。広島大学はその運営に少なからず運営交付金を受け取っており、その原資は国民の税金であります。国民の財産である現在手元に或るリソースを最大限効率的に運用し、患者さん一人ひとりに適正なサービスを提供することこそが、本邦の社会正義に適うものと考えます。そのために部門運営にかかるコストの適正な分析を行い、各リソースの有効活用を図っていきます。

最後に人文主義、ヒューマニズムです。

先ほども申し上げましたが、広島大学病院はその理念の最初に全人的医療を掲げております。我々ももちろん、その理念の通り「ひと」を支える医療従事者として、医療を届けてまいります。

患者さんへの高品質で継続的な医療サービス提供の為には、スタッフの 仕事と生活の調和、ワークライフバランスも重要であります。モーレツ社員が是とされた昭和は既に遥か過去のものとなり、平成も終わり令和へと時代は移ろうなかで、働き方改革など、仕事に対する価値観も様変わりしました。部門長たる私の使命は、そのバランスをとる事、すなわち仕事量を計り、適切に業務を割り振り、調整を行うことです。以てそのことが、患者さんやその家族はもとより、治療に携わるスタッフやその家族も含め、すべての皆さんの幸せの為になると考えております。

広島大学病院診療支援部放射線治療部門は、以上に述べました使命を果たすべく、チーム一同が力を合わせて努力する所存です。今後とも引き続き、皆様のご理解とご支援を何卒よろしくお願い申し上げます。